「パスワード」という仕組みは時代遅れ?
私たちが日常的に使っている「パスワード」は、長年にわたってオンラインサービスやシステムの基本的な認証手段として利用されてきました。しかし、現在ではこの仕組みに対する見直しが進んでいます。背景にあるのは、セキュリティと利便性の両面で限界が見えてきたという現実です。「パスワード」という仕組みには以下のような問題・課題が挙げられます。
- 漏洩や不正利用のリスクが高い
- パスワードは第三者に知られることで、簡単に本人になりすまされてしまいます。データ漏洩やフィッシング詐欺などにより、意図せず流出するケースも少なくありません。
- 使い回しによる脆弱性
- 多くの人が複数のサービスで同じパスワードを使いまわしており、ひとつ流出すると芋づる式に他のアカウントも不正アクセスされる危険があります。
- 管理の手間が大きい
- セキュリティを高めるためには長く複雑なパスワードを設定する必要がありますが、それを覚えておくのは容易ではなく、忘れてしまうリスクもあります。
こうした問題・課題に対応するため、最近では「パスワードを使わない認証(パスワードレス認証)」への移行が進んでいます。主な認証方式には以下のようなものがあります。
- 生体認証(顔認証、指紋認証など)
- 利用者本人しか持たない情報を使うため、なりすましが困難です。
- デバイス認証/パスキー
- 公開鍵暗号技術を用い、端末内に保存された鍵情報で認証を行う仕組みです。入力不要で、第三者に情報が渡ることもありません。
- 多要素認証(MFA)
- パスワードに加えて本人所有の端末やアプリを組み合わせた認証方式で、安全性を高める対策として広く使われています。
これらは、従来の「合言葉による認証」から、「本人の属性や所有物による認証」へと考え方を大きく転換するものです。現在すでに、多くの主要なIT企業やサービスプロバイダーが、パスワードレス認証の導入を始めています。今後はさらに広範囲で普及が進み、パスワードを前提としないログインが標準になる可能性も十分に考えられます。
今すぐ切り替える必要はなくても、今後のセキュリティ対策の一つとして、意識しておくことに意味があるのではと考えます。個人でお使いの身近なサービスの設定を見直すだけでも、新しい仕組みに触れるきっかけになりますので、無理のない範囲で、できるところから少しずつ検討してみてはいかがでしょうか。